障がいと介護

制度の壁をぶち壊す

あんずパパ
あんずパパ
子供の障がいを通じて、様々な壁にぶち当たって来ました。微力な私に何が出来るか、知れたことだとは思いますが、いくつかの壁のお話をさせていただきます。

介護保険制度は、年齢差別では???

仕事で平成11年頃から、介護事業に取り組んで来ました。
平成12年4月から、介護保険制度がスタートしましたが、「高齢者専用介護保険」と言う表現になっていないにも関わらず、残念ながら障がいは含まない、年齢で区別してある制度となりました。
私は、正に介護の年齢差別だと思っています。

予算や法律の関係上、区別せざるを得ないのかもしれませんが、もう少し実態にあった制度にならないものかと思います。
元々ドイツの介護保険制度を参考にしたと、ある研修会で聞きました。ドイツの介護保険制度には、詳しくは知りませんが、年齢の区別はなく介護が必要な国民は皆対象だそうです。

障がい児・者にはケアマネジャーはいない

例えば、高齢者には、身近な存在としてケアマネジャーや地域包括支援センター(ささえりあ)がケアプランの作成や様々な相談に応じてくれまが、障がい者のケアプランは、市役所の職員が行います

結果、自ずと使える介護サービスの限度に大きな差が出てきます。介護保険は、要介護度や利用者やその家族のニーズに応じてプランを作成してくれますが、障がいはそうはなりません。詳しくは述べませんが、体験された方は何を言いたいかはご想像いただけるかと思います。
また、高齢者と比べて、障がい児・者が使える社会資源の量・質は比較になりません。

更に国は、高齢者のために、平成24年4月の介護保険制度改正で、住み慣れた我が家で暮らし続けられるよう「24時間看護・介護の巡回型サービス」まで創設しました。
現在の高齢者介護の社会資源や仕組みは、数十年前から障がい児・者が訴えてきたことです。

それが急速に進んでいる背景には、制度を決める人達(官僚や政治家)に当事者意識があるからではないかと思ってしまうのは、私だけでしょうか。

医療保険制度の壁

仕事で在宅医療にも取り組んできましたが、次のように、入院から在宅医療に向けて医療制度も徐々に改正されて来ました。一部をご紹介します。

  • 訪問看護・・・1983年老人保健法
  • 訪問看護ステーション・・・1992年老人保健法改正(独立した訪問看護)
  • 居宅が医療提供の場・・・1992年医療法改正
  • 在宅医療が「療養の給付」として位置付け・・・1994年健康保険法改正
  • 介護保険法に基づく訪問看護・・・2000年介護保険法施行
  • 在宅自己注射指導管理料・・・1981年
  • 在宅酸素指導管理料、在宅中心静脈栄養指導管理料・・・1985年
  • 寝たきり老人訪問診療料・・・1986年
  • 在宅療養支援診療所の創設・・・2006年
  • 在宅療養支援病院の創設・・・2008年
  • 自宅患者訪問診療料乳幼児加算・・・2010年
  • 退院前在宅療養指導管理料乳幼児加算・・・2010年

等々、在宅とか居宅とか書いてありますが、ほとんどの制度改正は高齢者のためのものです。

障がいの世界は、事業として成り立たない?

障がい児・者を支援したいと思っている人は、医療界で働いている人の中にもたくさん存在します。私もその一人です。しかし現実、なかなか支援体制は進みません。

その主な理由は、使命感としては取り組みたいが、経済的に難しいからです。
費用対効果の問題は、大きいと感じてきました。医療機関も民間企業ですから、経営的に成り立たなければ、障がい児・者への継続的支援は無理です。

先にも書きましたが、障がい児・者、高齢者等区別なく、「介護というくくり」で医療保険・介護保険制度を改正できないものかと、常に思っています。

国民の当事者意識が高まれば

国の予算が関係しますので、簡単ではないことは重々承知しています。国民や政治家が、「いつ自分も交通事故にあって障害者になるかもしれない?」など、もう少し当事者意識を持てばどうにかなることだと思います。

やはり、他人事と思わせてしまう障がい児・者を隔離してしまう生活環境。それを作り出す社会保障制度が、根本問題なのかもしれません。自分は、「高齢者にはなっても、障害者にはならない。」、という考え方です。

近年では、ジェンダーの問題等、多様性を受け入れる社会に変化しているとは思いますが、まだまだ障がいに対する考え方の壁は厚いかと感じています。

私の過去の知人で、こんな事を言った人がいます。「今の高齢者は、戦争や日本の高度成長に貢献した人達だから、そのお返しを国からしてもらっているだけで、障がい児・者は、国に何の貢献もしとらんから、制度が進まんとよ」。
私の知人リストから、永久に除外させてもらいました。

訪問介護が利用できたのは本当に助かりました

私一人の力で、「制度の壁」を壊すことなど到底不可能ですが、徐々に障がい児・者の制度も改革が進んできました。
我が家でも、高齢者は当たり前の介護サービスとして利用できていた訪問介護や訪問入浴ですが、何年前までだったか明確に覚えてはいませんが、ほんの数年前まで障がい児・者(40歳未満)は、利用することが出来なかったのです。

夫婦だけで、二人の重度障害の子供の介護を毎日・毎晩行うことは相当の精神的・身体的負担があります。
若いときはどうにかなりますが、子供はどんどん成長し、親はどんどん衰退していきます。ある時期、子供がそれなりの体重となり、寝返りや入浴時の身体介護をするのが非常に困難な腕や腰に痛みを感じる状態が続いた時期もありました。
それを救ってくれたのが、訪問介護と訪問入浴のサービスでした。

現在では、週2回の訪問入浴と月~土まで訪問介護・看護のサービスが利用できるようになりました。
私たち夫婦も60歳を超え、子供の身体介護はなかなか大変になりましたが、皆さんの支援のおかげで、娘が旅立つまで施設に入所させることなく、家族一緒に我が家で過ごせます。

「加齢に伴う」から「介護が必要な人」への願い

平成10年頃だったかと思いますが、元々ドイツの介護保険制度を参考に制度が出来ると聞いていたので、私なりの大きな期待がありました。何故かというと、繰り返しになりますが、ドイツの介護保険制度には年齢の区分けはなく、「介護が必要な人」が制度の対象となっていたからです。

介護保険制度が出来るかもしれないという時期(平成10年頃)に、様々な勉強会に参加していました。
ある勉強会で、講師から『日本の介護保険制度は、どうも年齢で区切られそうです。制度の文言に、「加齢に伴う介護」という言葉が入るようです。』と説明がありました。
私にとっては、制度に期待していただけに、ショックな出来事でした。

あんずパパ
あんずパパ
私もあと2年で65歳となり、介護保険制度がより身近となります。自分の経験を介護が必要なご家族にもっと活かせるよう行動していきたいと思っています。