診療所と介護事業経営

無駄な経費は直接利益から???

あんずパパ
あんずパパ
前回の続きです。

4.胸ポケットに並ぶボールペン

実際、看護師の入職時研修会で話していることです。Dr・Nsの胸ポケットに、端から端までボールペンがズラリと並んでいる光景を目にされたことはありませんか。
そんなに、業務に何本ものボールペンが必要なのか。ボールペンの種類は、全て同じように見えますが。

理解できないので、Nsに質問してみたことがあります。すると「薬屋さんから次から次へと頂くので、使わないともったいないし、置いといてもカゼをひく(乾燥して使えなくなる事)ので」、という返答。

また、ナースの作業台の筆立てには、2~3色ボールペンの黒が付かない物ばかりが数十本挿してあります。

何故捨てないのか聞いてみました。「青が残っているのでもったいないから。」「で、使う予定は?」「いいえ、使わないから溜まってるんですけど。」(笑)。お互い顔を見合わせてしまいました。
一応、「もったいないという判断」です。この感覚、今までDrやNsにとっては、おかしくもない習慣であったようです。

私からすれば、もったいないではなく「無駄づかい」でしかありません。Nsもそれなりに考えての行動でしょうが、絶対におかしい。このおかしな習慣を変えなければと、次の対策を実行してみました。

DrやNsが直接、薬のメーカ・卸から頂いたボールペンや文具等は、一旦全て管理部へ渡してもらい、必要な分、取りに来てもらうようにしました。それでも多く頂いた場合、やはりボールペンは乾燥して使えなくなります。薬の担当者に、ボールペン等の販促品を極力減らして薬代を直接値引きしてくれるよう依頼してみました。

どれくらい価格に反映されているかは疑問ですが、Nsのボールペンの無駄づかいはなくなりました。

5.薬の勉強会で出される弁当は「ごちそう様」か

新薬の勉強会を薬業者の方にしていただくとき、今では多少厳しくなりましたが、私が事務長をやっていた頃は必ずお弁当が付きました。勉強会なのに、参加費無料の上に豪華なお弁当付きです。

一ついくら位するのかネットで調べてみました。2000円はすると思われますが、40人職員が参加した場合8万円になります。薬の利益で8万円を出すには、どれくらいの売り上げが必要か。医薬品卸の利益率が仮に10%とした場合、80万円の売り上げが必要となります。

わざわざ無料で、80万円もの薬を売らなければならない事をするでしょうか。この観点から考えれば、「ごちそう様」なわけがありません。
弁当代は販促費として、とうに薬の購入価格に含まれていて当然です。恩恵を受けているNsで、このことが理解できているスタッフは皆無に等しいのでは。言い過ぎかもしれませんが、全員が「ごちそう様」のレベルです。

少し考えて見れば理解できるはずですが、考えたこともない。「ごちそう様」とは、第3者から無料でいただくことです。弁当代は一見無料のように思えますが、実は有料であり、病院が支払っていると言うことです。

回りまわって、自分たちが支払っていることに気付いて欲しいものです。

6.必要経費と無駄の違いを知る

先に述べた弁当代もそうですが、専門職とは言え、もう少し利益と売上と人件費や経費の関係を知る、または、教育する必要があります。

例えば、Nsが高価な注射のアンプルを1本割ってしまったとしましょう。Ns「済みません、ちょっと手が滑りました。」、師長「今度から注意しなさいよ!」、Ns「はい、今度から注意します。」。この程度だから、同じミスを繰り返すことになります。

高価な注射薬を、計算を分かりやすくする為に1本1万円のアンプルだとします。今日の売り上げが、いくら吹き飛んでいったことに値するのか

皆さんの病医院に、この計算が即座にできるNsは何人いるでしょうか。私の研修会では、Nsにしっかりと教え込んでいます。そうしないと、ケアレスミスはいつまでたっても減りません。

病医院の利益率が5%だと仮定すれば、1万円のアンプルを「無駄に破損した」わけですから、売上に換算すると1万÷5%=20万円となります。もっと分かりやすくするために、外来1日一人当たりの平均単価を一人5,000円だとします。20万円÷5千円=40人。

Dr・Ns・医事課等、何人もの職員が一生懸命診療しましたが、アンプルを1本無駄に破損したがために、今日の外来患者さん40人は、無料で治療したことに匹敵します。

この教え方には、Nsも驚きの表情を見せます。売上にもともと含まれる原価の分であれば、アンプルは必要経費ですが、それ以外に無駄を発生させてしまえば、不要経費(売上を生まない)となります。無駄な経費は、変動費(原価)ではなく直接利益から減ることを、しっかりと知識として身に付けさせなければならないのです。

あんずパパ
あんずパパ
スタッフの勉強会でこの例え話を使ってみて下さい。果たしてどれだけのスタッフが驚くか?