診療所と介護事業経営

判断に迷ったら数字で読み解く

あんずパパ
あんずパパ
医療従事者向けに、必ず研修会で話している事です。

1.経営的鎖国業界

診療所や介護事業所の幹部の皆さんに、いきなり数字の話をしても理解できるはずがありません。バカにしているわけではなく、ほとんどの人が数字と直接無縁の専門職だからです。

ここで言う専門職とは、医師を始め看護師、臨床検査技師、レントゲン技師、OT・PT・ST、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー等、様々な有資格者のことです。

財務諸表の数字の分析ができる幹部は、私がこの業界で仕事をするようになって30年となりますが、ほとんどいないといっても過言ではありません。

業績という数字に慣れていない人にとって、極端に言えば数字とは、日本人に突然外国語で話しかけるようなものではないでしょうか。

私が一般企業で働いていた時は、毎月数字に追い回されていました。重責(石)と言う数字が、体に「ドン!ドン!」と上から圧し掛かって来るような感じです。業績が悪い月は、休日・夢の中までも容赦なく数字が襲いかかって来ます。

この業界に転職したとき、「経営的鎖国業界」だと思いました。数字と触れ合わなくとも、経営に困る事がなかったのでしょう。高齢化が進み、ある意味顧客(患者や利用者)は増えるばかりで、この先バラ色のようにも見えたのでしょうか。

間違ってはならないのは、少子化でもあると言う事です。高齢者が増えるということは、確かにある意味顧客の数は増えます。収入の7割~9割を医療保険に支えられている業界ですから。

但し、その保険収入を支えるのは現役世代です。お客は増えてもお金を負担してくれる人は、加速的に減少しています。自己負担を増やしていかなければ、保険制度は破たんします。自己負担が増えれば、患者の病医院や介護事業所を選ぶ目は、おのずと厳しくなります。

2.仕事とボランティアの区別がつかない職員

医療や介護の現場で、平気で仕事中にボランティアに精を出している職員を見かけます。一般職員だけならまだしも、幹部が率先して行っている病医院や介護事業所も存在します。

たっぷりと水(資本)を蓄えたダムを本体に持つ法人は、それでも経営は成り立つでしょう。事業所ごとに、自分で蓄えた水で命をつなぐのが本来の姿です。

時には、本体に助けてもらうこともあるかもしれません。一般企業にとって特別なことが、当たり前になり過ぎた業界です。

仕事は、稼がなければなりません。ボランティアとは、無報酬です。金、金と経営者はうるさいという職員は、「どこから自分の給料の原資は来るのか」、考えたことがあるのでしょうか。自分の仕事中の行動は、果たして生産性に結び付いているのか。

例えば、私の言いたい事が理解できるケアマネジャーは、自分の人件費を時間給に換算した場合、ケアプランは介護度に合わせ何時間でまとめなければならないか計算できるはずです。

3.表現を医療・介護従事者向けに変換

以前の記事で、10指標を使った経営分析を示しましたが、先に述べたように会計の専門家ではない医療・介護従事者にそのままの形で理解しろというのは酷な話です。

私なりに、業界で日頃使っている数字や出来事に変換して、分析の数値を説いてみました。介護の場合は、治療を介護やケアプランに置き換えて考えてみて下さい。

【経営のプロセス】

《治療の目的》      《経営の目的》

診断(診察・検査等)     ⇒    診断(月次決算)

治療方針           ⇒    改善方針(目標)

治療計画           ⇒    改善計画

治療行動           ⇒    改善行動(OJT・OFJT等)

(手術・注射・投薬・食事指導・運動療法等)

治療方法の見直し       ⇒    改善計画の見直し(政策・戦略)

再治療開始          ⇒    再行動開始

目的の達成(治ゆ・現状維持) ⇒    目的達成(売上・利益・給料増等)

どこまでご理解いただけるか個人差もあり解説の難しさもありますが、幹部の立場であれば、ある程度はマスターしていただきたい。

また、数字の専門家(コンサルタントや会計士等)には、簡単すぎて期待外れな内容に思えるかもしれません。

あんずパパ
あんずパパ
私が、医療・介護従事者を対象に実際行っている教育・研修会の内容です。受講者からは、一応分かりやすいという評価はいただいています。