診療所と介護事業経営

3数力 現状を数字で判断する能力

あんずパパ
あんずパパ
毎月の試算表を分析してますか?

《現状認識を数値化する能力》=月次決算・経営分析能力

理念という言葉は、堅苦しく難しい。私は、分かりやすくするために、理念を「ありたい姿」という言葉に置き換えて職員に話しています。

「森を見て木をみなさい」

「ありたい姿」を考えるとき、直近から考えてはいけません。近くても3年~5年先から考えて欲しい。「森を見て木を見る」「大局着眼、小局着手」という言葉があります。5年先にはこうありたいための3年、そのための1年、そのための半年、そのための1ヵ月という具合です。何事も完成図(全体像)を考えてから、各部分にとりかからないと、とんでもないものが出来上がってしまいます。

1年後の「ありたい姿」になるために必要な利益は。予想経費は。予想収入(目標収入)は。その政策・戦略・戦術は。これを計画書として文章化したものが、経営方針書(事業計画書)であり、数値化したのが予算書となります。

「事業の失敗は夏休みの宿題とは違います」

年度経営方針書通りに、実際の計画は実行されているか。業績は、予算書通りか。計画だけでは、夏休みの友と同じ、絵にかいた餅です。夏休みに入る時は、計画だけは一人前。毎年の反省も活かされず、相変わらず未完成のまま夏休みが終わる。いつものように先生に叱られ、来年こそはと新たな決意。身に覚えがあるのは、私だけではないと思います。

事業の失敗は、夏休みの宿題のように反省だけでは済まされません。しっかりとした現状認識を行い、計画より実績が上回っていればよいですが、そうでない場合は、早めに手を打たなければなりません。何もしなければ、最悪職員共々生活の土台を無くしてしまうかもしれません。皆さんの病医院・介護事業所には、現状を認識するツールはありますか。

「自事業所の定期健康診断書」

現状認識とは、「定期健康診断」と思えば分かりやすいかもしれません。「自分は健康だ」という思い込みではなく、人間ドックで第3者に客観的に判断してもらう。健康診断にも、ペット診断やMRI・CT等、高度な医療機器を使う場合もありますが、体重・身長・レントゲン・視力・聴力等、基礎的な診断(表1)もあります。

看護師や介護福祉士、PT・OT等の専門職で幹部の皆さんは、経営分析の専門家ではありません。高度な技術や知識が必要な経営分析は、第3者(税理士等)や事務長レベルにお任せすればいいのです。

皆さんにマスターしてもらいたいのは、「基本健診」です。基本健診の目的は、治療ではなく早期発見(予防)にあります。時には治療も必要になりますが、現状認識の目的は、早めにおかしい所を発見し、悪くなる前に手を打つことにあります。

【正しい現状認識と対策】

♦体調が悪い(赤字・資金ショート)  ⇒  病院で検査を受ける(経営分析) 
                      MRI・CT、血液検査、特定健診等

♢検査の結果(分析の結果)  ⇒ 悪い数値は何か(B/S、P/L)
                 外科的か内科的か(資金か損益か)

 例えば、労働分配率に問題有り(非常に高い)
 職員の適正人員、またはシフト、常勤・非常勤の比率等...。
      ⇒ 勤務表に問題有り ⇒ 勤務表を作成した管理者に問題有り

♦原因の改善 ⇒ 治療(薬、手術、入院、外来)計画
         管理者の教育、サービス時間の調整、勤務割の見直し等

では、病医院・介護事業所を診断するツールとは何か。それは「月次決算書」です。ここでいう決算書とは、法人の決算期に税務署に提出する確定申告書(貸借対照表・損益計算書)のことではありません。毎月作成する、月次の試算表のことです。

私は、「月次決算書」と読んでいます。月次試算表と何が違うのか。月次試算表とは、字が表すように、各勘定を一月の期間で試しの数字で締めた表です。
月次決算とは、各勘定を試しではなく、ほぼ確定した数字で締め切った表となります。一般的には、1年に1回確定申告のときに数字を確定させるのが普通です。詳しくは、別の機会に説明いたします。

「正しい判断をする物差し」「数字はもっとも正しい日本語」

幹部となれば、「正しい判断をする物差し」として、月次決算書を読む能力が必要です。幹部として、必須の知識だと思っています。毎月、予算書と実績(月次決算書)を比較し、何が原因で収入及び経費の差異が発生しているのか。その理由(原因)を明確にするのが、「現状認識」です。

人の報告には、思い込みがあります。時には、ウソもあります。達成度も、「ほぼ、まあまあ、だいたい、ぼちぼち、もう少しで」等々、全てがファジーであり、個人差も大きい。その点、数字は明確です。例えば80%達成は、誰の報告であろうと80%です。粉飾等の不正をしていない限り、個人差がなく「数字はもっとも正しい日本語」となります。

「日々の活動報告書」

損益計算書は、日々の活動報告書です。人と物が動いた結果を、数字で表現しています。
貸借対照表は、ある時点での財産(資金)の状態を表します。資金繰りを把握するためには、貸借対照表が読めないといけません。ほとんどの幹部は、損益計算書しか見ていない場合が多いかと思います。

貸借対照表を読み解くには、多少の簿記会計の知識が必要となります。皆さんの法人(事業所等)に管理部や事務長がいれば、貸借対照表の分析・解説は依頼しましょう。

「結果の原因分析」根本原因は何か?!

難しい分析は、専門部署にお願いし、現場の幹部が時間を使わなければならないのは、分析の結果を生んだ活動の検証です。現状認識とは、分析した数値が良いとか悪いとかいうことではなく、その結果を生んだ理由(根本原因)を明確にすることにあります。

結果がよければ、その理由をもっと伸ばす。悪ければ、その原因を明らかにし、改善又は取り除く。そのための行動計画を立案し、スタッフに実行させるのが幹部の役割です。スタッフになぜやるのか、やったらどうなるのか、実行させるときの動機づけに、数字は欠かせない「理論武装の武器」となることを、ぜひ実感していただきたいと思います。PDCAサイクルに、ぜひ数字を活用してください。

あんずパパ
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数字を使いこなせれば、マネジメントの力となります。

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