前回長くなったので、老人ホームの種類について続きを書きます。
私が、皆さんに知っていただきたい事は、制度や法律に定義された区分ではありません。
入居を希望されるご本人やご家族の視点に合わせた区分の仕方です。多少、主観的になりますが、専門家の目線の説明は少なくし、利用者目線でお伝えしたいと思っています。
まずは専門家の視点からの説明 「根拠法が違います」
《根拠法と所管の違い》
有料老人ホーム ⇒ 老人福祉法(厚生労働省)
サービス付き高齢者向け住宅 ⇒ 高齢者住まい法(国土交通省)
特定施設入居者生活介護(介護付き) ⇒ 介護保険法(厚生労働省)
《入居基準抜粋》
介護老人福祉施設(特養):原則要介護3以上
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム):要介護者
住宅型老人ホーム:老人(老人の定義はなく社会通念)
サービス付き高齢者向け住宅:60歳以上の単身が主(夫婦世帯も可)
グループホーム:要介護者・要支援者であって認知症である者
1人当たりの床面積や人員基準等、色々な違いがありますが他のSNSでお調べください。
「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」も、市町村が行う特定施設の公募に応募し、認可を受ければ「特定施設」となることができます。といっても、よく分かりませんよね。文章で分からなくてもいいと思います。
何故なら、同じ類型の有料老人ホームでもサ高住でも特定施設でも、経営者の考え方で建物の構造や運営方針に違いがあるからです。もちろん夫々に必要な施設基準や人員基準は満たしていますが、最低基準ギリギリで運営している劣悪な施設もあります。
大切なのは、どういう暮らしを送りたいか 経済力は?
自分がこれから施設や高齢者住宅に移り住んで、どういう暮らしを送りたいのか?
そして自分に、どれだけの経済力(支払い能力)があるのか?
このバランスで選ぶのが現実的です。
どんなに素晴らし立地や部屋を望んでも、ぜいたくな食事を望んでも、支払い能力がなければ入居は無理です。
食事がまずいと言っても、食費が安い施設を望めば仕方ありません。隣の音が聞こえる、うるさい、寒い・熱い、と思っても、安い家賃なら仕方ありません。
それなりの住環境を望むならば、それなりの費用が毎月必要となります。望は高くとも経済力が伴わなければ、多少の妥協とあきらめが必要となります。
支払額(生活費)を極力抑えたい!
安さで選ぶなら、公的資金が投入されている「特別養護老人ホーム」をお勧めします。また、支払い能力に応じて入居費用が決まるので、例えば生活保護の方でも安心です。
但し、施設数が圧倒的に不足しているので、現在は要介護3以上の方しか入居対象とならず、また、どこの特養も何十人と待機者がおり、入居を待っている間に亡くなってしまうという話もよく耳にします。
近年、特養を国が予算不足で増やせない分、民間企業が運営する「住宅型有料老人ホーム」が急増してきました。有料老人ホームと言っても、制度は同じでも多種多様。建物の構造が鉄筋コンクリート造からプレハブ造り。部屋の広さも10㎡~25㎡もあれば、設備も洗面台だけの部屋からトイレ・キッチン・浴室まで設置されている等、様々な違いがあります。中には、中古の建物(社員寮やアパート等)を改造して使用している有料老人ホームもあり、いくつか見学に行きましたが、ひどいところは、もともと一部屋だものを間に薄い壁を設置し二部屋にし、驚くほど狭く窓もないところもありました。
トイレや洗面台がない部屋の場合、共用となりますので、わざわざ部屋を出て廊下を歩いて行くことになります。お分かりと思いますが、年を取るとしょっちゅうトイレに行きたくなります。夜中もです。足が悪いお年寄りには、トイレが共用となるだけで過酷な生活環境となります。
かと言って、家賃が安いとは限りません。生活保護者を対象としている有料老人ホームは、劣悪で狭い部屋でも住宅給付分の3万3千円を家賃としているところも多く存在します。
利用者目線からの分類
♢費用が1円でも安く済む所
♦本人の年金で暮らせる所
♢少し費用が掛かっても、部屋にキッチンや浴室が付いている所
♦入居一時金がいらない所
♢食事が作れる(給食が自由注文制)所
♦施設のスケジュールではなく自分の時間で自由がある所
♢外出や外泊が自由な所
♦入居者が軽介護の人が多い所(コミュニケーションができる)
♢施設に楽しみ(行事・レクレーションやクラブ活動等)がある所
♦面会が自由で家族が宿泊できる所(現在はコロナで規制中)
♢田舎ではなく、交通や買い物が便利な立地にある所
♦子供たちの近くにある所
等々、数ありますが、ご本人やご家族の目線は、専門家が説明するような根拠法や施設類型ではなく、上記の様な視点で選択されという事です。
医療機関が開設する住宅を選ぶ
先に述べたかもしれませんが、日頃から長い付き合いの医療機関(かかりつけ医)が開設している有料老人ホームが一番案心です。
人生の後半、安心して住み慣れた我が家で暮らし続けるためには、介護力はもちろん医療が不可欠です。
高齢者向け住宅の約8割は、民間企業(株式や有限)が開設しています。そのほとんどが、療養管理等の健康管理は、連携医療機関が行なっています。
皆さんに問います。医師自ら開設している住宅と、どこかの医師と連携している住宅と、もし入居者に体調の急変があった場合、速やかに親身になって対応してくれるのはどちらでしょう?
病気の時も健康な時も知っている関係。日頃からの、「なじみの関係」が大切です。ご本人だけではなく、ご家族や地域の友人まで知ってくれているかかりつけ医を持っていますか?
医師だけではありません。看護師、受付、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、検査技師、管理栄養士、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネ)等、なじみのスタッフはいますか?
一人でも多くの顔なじみがいる事が、年を取るほど何よりの安心感につながります。
医療機関も大病院がいいとか診療所はどうだとか、規模で判断される方もいますが、大切な基準は、生活支援が出来る医療機関、病気だけではなく生活相談にのってくれる医師かどうかで選びましょう。
この記事が、これから終の棲家を探される方や入居相談を受ける相談員やケアマネジャーのお役に立てればと思います。