診療所と介護事業経営

1数力 方向性を数字で判断する能力

「方向性」とは「ありたい姿」のこと

《理念・方針(ありたい姿)を数値化する能力》 = 予算書作成能力

「あなたの職場には、ミッション・ビジョン・戦略はありますか?」

どういう医療をやりたいのか。やりたい医療とは、どんな医療なのか。なぜ、介護事業をやるのか、なぜこの業態なのか、どんな事業所でありたいのか。あなたの職場には、ミッションやビジョンは明確にありますか?

経営安定のためには、医業であろうが介護事業であろうが、しっかりとした理念(目的)が必要です。目的があってこそ、経営の要素である、人・物・金・管理が見えてきます。理念は、錦の御旗です。もっとも大切な錦の御旗がなければ、組織が目指す方向が定まらずモチベーションも高まりません。

病院であれば、急性期でいくのか慢性期でいくのか。診療所であれば、在宅医療中心でいくのか有床診療所でいくのか。介護事業所であれば、デイサービスなのかデイケアなのか等々。その業態にした目的は、何なのか。

「目的を達成するための建物・設備・人・管理システムは?」

目的が明確にならなければ、それを実現するために必要な人はどんな人か。建物や医療機器等何が必要か、どれくらいの規模でどんな検査機器等が必要か。その為に必要な資金はどれくらいで、借入金はどれくらい必要か。返済能力は。人・物・金を管理する仕組みには、どんなものが必要か。考えなければならないことは沢山ありますが、まず目的がなければ、見えるものも見えてきません。

◆必要な人・・・資格、男女構成、年齢構成、経験、人数、素地(人格)
、組織図等

◆必要な物・・・建物の階、構造、広さ、機能、検査機器(MR・CT)
、備品、車等

◆必要な金・・・自己資本、他人資本(どこから、いくら)、資金繰り等
◆必要な管理・・・就業規則、賃金規程、会議、帳票、各種様式、教育・研修等

施設基準、設備基準、人員配置基準等、法令は遵守しなければなりません。目的を達せするために必要な規模、機能、人数はどれくらいか。国が定めた基準は、あくまでも最低守らなければならない基準です。まず一番目に、目的=ありたい姿を明確にする。二番目に、目的を達成するために必要な要素を考える。まず、自分の病医院・介護事業所はどういう目的を基準に考えてあるか、検証してみることをお勧めします。

「物事を数字で考える習慣を身に付ける」

さて、このブログで理念・方針について詳しく解説しようと思っているわけではありません。幹部の方に、物事を数字で考える習慣を身に付けてもらう事が目的です。

どんなに理念や志を持っても、それを動かす基になるのはお金です。お金がなければ、物も買えない、人も雇えない。企業である以上、どんなに素晴らしい医療・介護サービスを提供したいと思っても、お金にならなければその行為はボランティアであり、事業としては成り立ちません。

私流に理念・方針を数字で表現したものが、予算書です。数字遊びではない、予算書です。数字遊びとは、単純に事業計画書を前年対比○○%アップという数字の羅列で作成することです。計算さえできれば、誰でも作成できるレベルです。

数字には、根拠がなければなりません。人件費一つとっても、資格・男女・経験・役職等が違えば、大きく違ってきます。社会保障関係の費用は、毎年自動的に負担率が上がっていきます。ガソリン代も高騰しています。電気代も、原子力の関係でどうなるか分かりません。収入は、国が報酬改定を行えば、同じことをやっていても近年では減収ばかりです。

「予算書に夢を持たせる」

予算書には、将来の夢がなければならない。環境の厳しさばかりを反映させては、楽しみも遣り甲斐もありません。何も大きい夢でなくともいいのです。給与アップしかりですが、職員旅行でも、訪問用車両を増やす、有給休暇取得のために職員を増やす、制服をリニューアルするでもいいのです。

理念を軸に経営方針書で計画した5年後、3年後のありたい姿を想像し、今年1年の政策・戦略に基づく具体策を実行した結果を、数字で予想し予算書を作成する。

幹部には、スタッフが「わくわくする夢を持たせた経営方針書」に基づく「予算書を作成する能力」を身に付けてもらいたい。詳しくは、予算書作成の章で解説します。

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