老後の備え

間違いだらけの終の棲家探し

サービス付き高齢者向け住宅の館長として、約8年間200件近くの入居相談を受けてきました。
この経験の中で、どうしても老後の住まいでお悩みの方に伝えたいことがあります。それも少しでも早く、また皆さんが少しでも若い内に。
若いと言っても、20~30代という事ではなく、定年を迎える少し前。早ければ45歳から、遅くとも定年前(現在は60歳)には、考えていただきたい。

ぜひお伝えしたい事とは、

1.現在、終の棲家をお探しのご家族の意識の中にある住まいは「老人ホーム」であり、また、イメージがほぼ同じであること。

2.住宅を決めるのは、ご本人ではなくご家族(息子や娘)であること。

3.ほとんどの方が、「もう少し悪くなったら入ろうかと思っています。」と、元気な時に探すところではないと考えていること。

4.今後どういう生活を送りたいかより、金銭問題が優先の人が多いこと。

5.我が家では、介護状態になったら暮らせないと思っている人が多いこと。

高齢者のニーズ

1.日常生活に関するニーズ ベスト3
(1)自分や配偶者の健康や病気のこと   71.7%
(2)自分や配偶者が寝たきりや身体的に不自由になり介護が必要な状態
になること             51.8%
(3)生活のための収入(年金)のこと   31.3%

2.経済的なニーズ ベスト3
(1)健康維持や医療介護のための支出   44.2%
(2)冠婚葬祭費             42.8%
(3)子供や孫のための支出        27.9%

3.住居に関するニーズ ベスト3
(1)現在の住宅に、特に改造せずそのまま住み続けたい  37.9%
(2)現在の住宅を改造し、住みやすくする        24.9%
(3)介護を受けられる公的な特別養護老人ホームなどの
施設に入所する                  17.9%

相談に来た人の特徴

【本人が男性の場合】
♦「なんで俺がこぎゃん所に入らなんとか!」と怒り出す
♢車から降りもせず、見学もせず、話も聞かず、はなから否定的で消極的
♦プライドが高く、他の老人を見て「俺は違う!」と思っている

【本人が女性の場合】
♦老後は一人になると思っているのか、関心が高い
♢老後を当事者意識で感じ、肯定的で積極的である
♦家族からの相談も、息子さんより娘さんが多い

【こぎゃんところ!?俺は違う!?】
「こぎゃん(こんな)ところ」とは、恐らく老人ホームの事ですが、現在70歳代以上の方が抱くイメージは、昭和の頃の8人部屋の施設ではないでしょうか。
制度も介護保険ではなく、措置費の時代です。もっと高齢になると養老院と思われています。
施設には、認知症で寝たきりの老人ばかりがいて、建物には尿臭が染みついた暗いイメージというところでしょうか。
平成から令和となり、現在の高齢者の住まいは専門家でも理解できないほど多岐に渡り、その違いがよく分からないほど複雑です。
また、「俺は違う!」とは、誰と比較し、何が違うのか?
80歳代の方でも90歳の方でも、「あげん老人とは一緒におられん」と言われる方も多くいらっしゃいます。果たして、こういう方にとって老人とは何歳でどんな人なのでしょうか?
これから、様々なご家族の相談を受けてきた体験から、エピソードを交えてお伝えしていきたいと思います。