診療所と介護事業経営

自分の稼ぎと人件費の関係を知ろう

あんずパパ
あんずパパ
給料が低いと言う前に、自分がいくら稼いでいるか計算してみましょう。

 

あなたの働きは、どのくらいの収入になっているのか?

医療・介護事業所の職員は、残念ながら、自分がいくら稼いでいるのか一人も知らないというより、正しくは知ろうともしていない(必要がなかった)のでは、と思えてしまいます。その結果、小多機など丸めの介護サービスは、利用者家族の言いたい放題のサービスを提供してしまい、毎月大赤字となってしまいます。

スタッフは大忙しなのに、大赤字なのです。

仕事が忙しいということは、普通に考えれば商売繁盛なのですが、先に述べた「労働生産性」が伴わないボランティア精神のサービス(無料奉仕)で忙しいと、困った事態を招きます。

更に困ることは、職員は忙しいほど充実感に浸っています。ボランティア団体ではない営利企業である事をしっかりと教えなければ、とんでもないことになってしまいます。

あなたの行動は、適正(生産性を考慮した)サービスですか?

小多機の機能を簡単に説明すると、通いを中心に、訪問、宿泊のサービスがあり、それらを同じ職員が実施する「なじみの関係」が特徴です。
また、ケアプランも内部の計画作成担当者が行います。料金は、宿泊費や食費は実費ですが、それ以外のサービスの利用料は、月何回利用しても同じです。

理解していないケアマネジャーや包括支援センターの職員は、利用者に小多機のサービスは飲み放題・食い放題のようなものと表現しています。これこそ、大きな問題です。

月額報酬 令和元年10月現在(古いですが、あくまで参考計算なので)

【小規模多機能型居宅介護事業所】

要介護1 103,200円  要介護3 220,620円
要介護5 268,490円

【認知症対応型通所介護】日額報酬

要介護1  9,850円   要介護3 11,990円
要介護5 14,140円

1日7~8時間の場合

小多機によくある問い合わせは、「要介護1ですが、毎日利用できますか?」「要介護3ですが、毎日泊めてほしいのですが?」

小多機には小多機ならではの機能があり、デイサービスでも入所施設でもありません。基本、生活の場は在宅となります。

毎日泊めるなど、それを宿泊と言えるのか。私は、「それは泊まるではなく、住むということでしょう。」と返答しています。

話が少しそれましたが、ボランティア精神でのサービスとは、上記図表を参考に考えてください。

例えば、要介護1の介護報酬支給限度額は、小多機1月103,200円です。対比する事業所として適当かは、ご意見があるかもしれません。
要介護1の利用者Aさんが、認知症対応型通所介護に保険内で通える一カ月の回数は、103,200円÷9,850円≒11回となります。(他のサービスはないと想定)

もしこのAさんのご家族が、小多機は定額制なので週6回は利用したいと希望した場合、教育を受けていない管理者は、利用者欲しさに安請け合いしてしまうかもしれません。

1月4週としても、24回の利用となり、認知症対応型通所介護に換算すれば、236,400円分のサービスを提供したことになります。単純に計算しても、133,200円の持ち出しとなります。

自分の行動を「診療・介護報酬額」と比較してみましょう

このご家族の発想は、小多機の機能を利用したいのではなく、少しでも安く多く利用したいという、「飲み放題・食い放題」の考え方そのものです。

もちろん小多機でサービス提供は可能ですが、職員数を増やすことでしか対応できません。その分、人件費が増加し赤字運営になってしまいます。正しく、原価割れです。

診療報酬は複雑なので、介護報酬に絞ってご説明しますが、介護度でなぜ報酬金額が違うのか。介護報酬は、何故要介護度で違うのか。何故サービスを提供する前にケアプランが作成されるのか。

私の経験上、理解している管理者・介護従事者は、非常に少ないと言えます。

サービスに対する報酬が違えば、ケアプランでサービス内容に違いを付けるのは当たり前です。料理でも何でも、料金が高いほど内容が濃くなって当然です。

このことを、きちんと教育しないと大きな誤解を招きます。「こんなに頑張っているのに!」「差別しろというのか!」と反発を招いたりします。

私も当初、それくらいは理解できていると思っていましたが、驚くほど報酬の違いを考えていない医療・介護従事者が多いことを認識しなければいけません。

部門長は経営者です

「生産性は経営者の責任であり、私たちは介護・看護が専門ですから。」ということを平然と発言する管理者もいます。

管理者は、経営者ではないのか?
管理者研修では、「事業所は夫々が経営的には独立していて、管理者はそこの経営者である。」と、説明しています。

一般企業では、「管理者は業績責任者」です。介護事業の管理者に、業績責任を経営分析の数式を使って難しく説明しても理解できません。

但し、最低、人件費と固定費がきちんと支払える分稼がないと、人件費を減らさざるを得ないという事は知って欲しいと思います。

私が行っている医療・介護従事者向け研修会では、最初にこの意味を理論的に分かりやすく説明し、理解してもらっています。

例えば、人件費(賞与)を羊かんに例えて話しています。
自分の羊かんを少しでも厚く切ってもらうためには、羊かんを長くするか?食べる人数を増やす、減らす?誰でも理解できる質問です。試しにやってみてください。

あんずパパ
あんずパパ
給料は触れにくい話題かもしれませんが、「費用対効果=報酬と自分の給与の関係」を知る事はモチベーション向上にも関係してくる重要な知識です。