ベスト1.親のため? に子供が探す
「親のために」と言うより、子供(自分達)のため、言い換えれば、本人のためと言うより家族のためではないかと、お話をお聞きしていると正直そう思います。
なぜ、そう思うのか?
子供さんが老人ホーム等を探されるタイミングは、ほとんど共通しています。親の介護が大変になってきたからです。トイレ介助が大変、認知症が進んできた等の理由です。言葉はきついかもしれませんが、要は親が手に負えない、自分達の生活に邪魔になってきたという事です。ついさっき食事をしたのに、「食事はまだか!」と怒る。お金がなくなったと、嫁を疑う。ちょくちょく出かけては、帰り道が分からず警察のお世話になる。しょっちゅうお漏らしをしては、あちこち汚しまわる。
具体的な相談内容としては、
①1日でも早く入所させて欲しい。
②少しでも費用が安いところがいい。
③私たちも困っています。どうにかして下さい。
④もう少し悪くなってから入ろうと思います。
①~③はご家族、④はご本にのセリフです。
・・・等が多くあります。
1日でも早く入所するためには、常に空きがあるような人気のない、あるいは何か問題がある施設となります。例えば、田舎にある虫が飛んで来たり、カエルの合唱が聞こえたり、周囲は田んぼや畑に囲まれた星がきれいに見える、また、職員が虐待事件を起こしたような施設でしょうか?
やはり自分が暮らす住まいは、家族ではなく「自分のために、自分で探し、自分で決める」。今、80歳超えたらと思っている方は、入所する時期は別として、自ら判断できる遅くとも60歳までに、一度は「自ら探し、自ら見学し、自ら相談し、自分で決める」を体験してみて下さい。早すぎる事はありません。
ベスト2.少しでも費用が安いところを
経済的に少しでも安いところをと考えるのは、よく理解できます。老後資金を潤沢に預貯金等で準備している人はまれで、ほとんどの高齢者は年金生活です。
但し、安い費用で入所できる施設とは、それなりの理由があります。
①土地代や建設費を抑えてある
土地代を抑えるには、少しでも田舎の宅地ではなく農業振興地域やもともと川の三角地帯であった土地等が、安く手に入ります。僻地に建設されている老人ホームは、全国結構な数に上ります。ニュースでたまに、水害や土砂災害に見舞われた施設の被害報道がありますが、もともと家を建てたら危険な土地に建っている場合が多いのです。
交通の便も悪く、家族も面会に来るのが大変。近くにコンビニも病院もない。建物の構造も費用を抑えるためにプレハブ造りが多く、夏は暑く冬は寒い、耳が遠い人が多いとは言えお隣の音がバンバン聞こえる。それなりに費用を抑えた場所と構造になっています。
②どこの いつの 食材?
食費にかかる費用は、月額〇〇円とお話をすると驚かれる方が結構多くいます。一食の料金は、朝・昼・夕で違いますが、約600円前後でそう高く感じない様です。しかし、一月に換算すると約5万円程度になりますので、「そんなにするんですか。」と言われるご家族が意外と多いのです。
そこでお話しするのが、食事の写真をお見せしながら、「買い物にも行かず、献立を考えなくてもよく、管理栄養士が栄養バランスを考えた定食が食卓まで運ばれてきて、下膳もし食器を洗ってくれて600円です。奥さん、献立を考えたり作るのは大変でしょう!?」。すると、だいたい子供さんご夫妻でご相談来られる場合が多いので、奥さんは、「それは安いです。助かります。」と返事がありますが、男性は自分が料理で苦労をしていない分、食費にだけ気が行くようです。
男性には、「食費の料金には、食材費・水道光熱費・調理器具・食器・栄養士や調理員の人件費等で構成されています。それからすると決して高くはないと思いますが。」と、お話しした方がご理解いただけます。
しかし、施設の中には月額の食費が3万円以下の所もあります。月3万円、月30日として、1日千円、1食平均333円となります。ご説明した通り、この333円には、食材費・水道光熱費・人件費等が入っています。果たして食材の産地は?また、鮮度は?調理員の人件費はきちんと適正な賃金を払っているのでしょうか?疑問です。
③サービスの質が悪い
調理員もですが、介護士の質がサービスの質です。安い賃金で果たして質の良い職員を雇用できるでしょうか?
④後付けの費用に要注意
掃除・洗濯代、オムツ代、水道光熱費、管理費等、当初表示してある入居費にドンドン数字が足されていくケースもあります。介護サービスを必要以上に利用させる施設もあります。契約書の内容や料金の仕組みをきちんと確認しましょう。料金明瞭な施設は、必ず費用のシミュレーションをしてくれます。
結論として、『安いには理由がある』という事です。
老後の住まいは、あなたの選択で決まるか?家族の選択で決まるか?経済力に合わせた選択となるか?考える・判断力ある内に終の棲家を考えてみましょう。
ベスト3.もう少し悪くなったら入ろうか
身体が介護状態になったら、気軽に施設を見学にいけません。物忘れや認知症が進行してからでは、自分で施設の良し悪しの判断ができません。決断もできません。
結果、悪くなったら我が家から家族が探した施設へ入所することになります。
決して施設入所が悪いという事ではありません。ただ、相談に来られる方(当事者)が、「決して施設なんかには入りたくない。」と言われるからです。だったら、自分がしっかりしている内に施設を見学して回るべきです。現在、施設等は多種多様であり、昭和20年代以前の方々が想像している老人ホームと同じ形態もありますが、専門家も区別が説明できないほどの種類があります。
私が館長を務めてきたサ高住は、賃貸住宅です。施設ではありませんが、見学に来られる方は、ほぼ全て老人ホームと思っています。ちなみに、病院は入院や治療を受ける所。施設は、施しを受ける所。住宅は、生活(暮らし)をする所で、自由があり自立がある生活を送る住まいです。
住所とは、住む所と書きます。病院や施設には、個人の住所はありません。
私のサ高住では、次の様なエピソードがあります。入居者のほとんどはお元気で自立されているので、友人から「元気なのになぜそぎゃん施設に入るとね。まだ早かよ!」と言われるそうです。すると入居者は、「なんば言いよっとね。老人ホームじゃなかよ。高齢者が暮らしやすいように作られたマンションに住み替えたつよ。」と返答されます。
いまコロナ禍で友人を招くことはできませんが、以前は、よくお友達が見学に来られていました。
皆さん、「悪くなってから入ろうという考え方は間違いだ」、という事に気付きていただきましたか?
ベスト4.老人ホームなんか入りたくない!
一概に老人ホームと言っても、私の様な専門家でも区別がつけにくいほど多岐に渡ります。
見学・相談に来られる方で、「老人ホームなんかに」と言われる方の多さに本当に驚かされます。果たして、老人ホームをどんな所と思っているのでしょうか?恐らくその多くの方が、自分の親の時代の記憶が大きく影響していると感じています。
現在70歳以上の方の親ですから、まだ介護は家庭で家族が面倒をみるのが当たり前の時代。施設は、寝たきりで何も分からない人が入る所という時代です。そんな所と思っている施設に、入所したいと思う人は一人もいないでしょう。
「なんで俺(私)がこぎゃん所に入らなんとか!」という台詞が口から出る気持ちも理解できます。
ちなみに、大枠で高齢者の住まい等を分類すると
(1)特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
(2)有料老人ホーム
①住宅型
②介護付き(特定施設入所者生活介護)
(3)サービス付き高齢者向け住宅
サービスの内容で有料老人ホームに属するものとそうでないものがあります。
(4)グループホーム
(5)老人保健施設・・・本来病院から自宅へ帰る為の生活の準備をする中間施設です。
現状は特別養護老人ホームが不足している為、老人ホームの役割を果たしている場合
が多くあります。
等々、大まかな分類ですが、別のコーナーで老人ホームの違いを詳しく書きたいと思います。
大切な事は、自分が最後まで暮らせる住まいです。施設や住宅の違いや特徴を知って、賢く自分で選択することです。
ベスト5.我が家では暮らし続けられない?!
重介護状態や認知症になったら、我が家では暮らせない。と思っている方が非常に多くいらっしゃいます。その理由はですが、共通する理由としては、同居家族がいない、近くに面倒を見てくれる人がいない等、介護者が身近にいない。連れ合いが亡くなり独居になった。だから、その多くの方は、「施設で暮らすしかない」と思い込んでいます。
ところで皆さん
①かかりつけ医は持っていますか?
②地域包括支援センターを知っていますか?
③ケアマネジャーを知っていますか?
④在宅療養支援診療所を知っていますか?
⑤訪問看護、訪問介護、訪問診察、看護小規模多機能型居宅介護を知っていますか?
現在、在宅で暮らし続けることが可能となるよう、国が介護保険制度を平成12年に施行し、様々な社会資源を整備し続け20年以上が経過しました。これらを上手に活用することで、独居でも暮らしたい我が家で生活を継続することが可能となっています。
「悪くなったら施設へ」という時代ではありません。困った時は、まず「かかりつけ医」に相談されることが近道です。
2000人市民委員会という団体のアンケート調査で、自宅での療養に対する不安の理由で最も多いのが、「介護してくれる家族はいるが負担がかかる」41.7%、「介護してくれる家族がいない」14.1%、「部屋の状況等、居住環境が整っていない」13.3%、とこれだけで全体の約70%を占めます。
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