釣果を上げる為には、魚がどういう時に「食い気」が上がるのか知る必要があります。適当に釣ることも楽しみ方の一つではありますが、遊漁船は釣らせなければリピーターが続かず、漁師は食うために漁獲量を上げなければ生活が成り立ちません。
「食い気」と海水温、潮の流れ等の関係を知る
釣果を上げるための基本中の基本が、時合いを逃さないことです。時合いとは、魚の食い気が盛んな時間帯ということで、目で見える食い気の場面が、「ナブラ」です。仕事で言えば、ニーズや流行や売り時のことです。
水族館で見たことがある方は、イワシなどの小魚が丸く固まって泳いでいるところを想像してみて下さい。ナブラとは、イワシ等の群れにブリ等の大きい魚が下から水面まで突き上げ、水面上でバシャバシャと水しぶきを上げている状態です。魚も興奮状態ですが、負けないくらい鳥もアングラーも興奮状態となります。
釣りの初心者の時も40年のベテランになっても疑問に思うのが、「釣れる季節は」「釣れる気温は」「釣れる時間帯は」「雨の日は釣れるのか」「風があると釣れないのか」「大潮・中潮・小潮・若潮・長潮のどの潮が釣れるのか」等々。それぞれ複数の条件が混ざり合い、魚の種類によっても条件が違う等、どの日が釣れてどの日が釣れない、その理由が何なのかという判断は、何年やっても難しいものです。
魚の特性により、釣れる条件は様々です。何を釣る(狙う)かで、季節や天候、潮の大きさ、場所等、判断するのが賢明です。だだし、これから書く魚の習性は、釣る対象魚のほとんどに共通の「釣れる条件」です。これを知っているだけでも釣果は違ってきます。人間の購買心との共通点もあります。営業の参考になればと思います。
魚は【1日2食】
現代の人間は、朝昼晩の3食が普通ですが、魚は朝と夕の2食になるそうです。江戸時代くらいまでは、日本人は1日2食だったと聞いたことがありますが、それが自然なのかもしれません。生活習慣も違うのでなんとも言えませんが。
大部分の魚は、朝まずめ(朝陽が出る前の明るくなってきた頃)と夕まずめ(太陽が沈み暗くなる前)に餌を食べようとします。その時間帯に合わせて釣りをすることは、理にかなっています。
魚は、ご馳走が目の前にあっても、お腹一杯ではなかなか口を使いません。朝・昼・夕と、時間が来れば食べてしまう人間とは違います。40年以上釣りをやっていますが、肥満魚(養殖場から逃げた魚は別)は見たことがありません。
【水温の高低と食い気】
水温がその魚にとっての適温でない時は、食い気を無くすようです。魚になった事がないので断定はできませんが、前日から急に寒くなり、急激な水温の変化があった翌日は確かに釣果が悪い。
魚は、自身で体温調整をする変温動物なため、温度には敏感に反応し、水温に適応しようと努めます。調整には2~3日かかるそうで、その間はほとんど餌を取らないそうです。水温の高低よりも、「急激な変化」がダメだということです。
温度が違う海水は、混じり合うことなく層を形作ります。釣りをする人はご存知かと思いますが、2枚潮もそうです。漁村で育った私は、小学生の頃まではよく潜って魚を鉾で付いて遊んでいました。2mも潜るとヒヤッと驚くほど水温が低下する境目があります。また、月の関係で起こる満ち引きだけではなく、海水温の違いによっても海流が発生します。お湯と水が混ざり合ってぬるま湯になるという、お風呂の理屈は通じません。
【潮の流れと食い気】
また、潮の流れが止まると、なかなか魚は釣れなくなります。これにも、きちんとした理由があります。
魚は、海水に溶けているわずかな酸素をエラを通して血液中に取り込んで生きています。楽に呼吸できる条件は、サラシ場や白波が立つ海面近くやフレッシュな海水が、ほど良いスピードでエラを通過していくような場所です。食べる以前に、息苦しい場所では、食い気がなくなるのは当然です。
私の釣りのフィールドである天草(有明海)は、干満の差が大きいことで有名です。魚の種類にもよりますが、小魚を餌にしている魚ほど、潮止まりにはパタリと釣れなくなってしまいます。特に青物は、大潮の干満の差による流れが速い時が、よく釣れます。
また、潮の流れが速いと、イワシ等の小魚は上手く泳げなくなり狙いやすくなります。さらに、潮の流れがあるときは、海面上ではよく分かりませんが、川と同じように流れの道筋を発生させます。その流れに沿って餌となるイワシが流れてくるので、魚の待ち伏せの場所もある程度想像ができます。そこを狙って、餌(ルアー)を送り込めば、釣果アップ間違い無しとなる訳です。
営業の「買い気」
営業も、売りやすい条件とは何か。「1日2食」「水温の高低」「潮の流れ」に合わせて考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
顧客の購買心理=「買い気」を知り、必勝の技、パターンを作る。そして、売れるときは徹底的に売る。(魚と同じで短期間での売り過ぎには注意)
売り時・タイミング・TPO、新社会人の時期・新入学の時期・ボーナス時期・クリスマス・お正月等の「買い気」がある時に徹底的に売るということです。
ここで顧客の「購買心理の7段階」について説明しておきます。
『購買心理の7段階』
①注意
人:ある商品の存在を知って、注意を向ける段階
魚:あそこに餌があるぞと、注意を向ける段階
②興味
人:その商品に関心と興味を持つ段階
魚:その餌に関心と興味を持つ段階
③連想
人:その商品を手に入れた場合、どのような利益や利点が
あるかを連想する
魚:その餌を食べた場合、おいしそうだな~と連想する
(魚の事は分からないが)
④欲求
人:その商品を自分のものとして、あるいは誰かのために
欲しいと思う段階
魚:その餌を自分のものとするために、いち早く食いつこ
うと思う段階
⑤比較
人:欲望は起きたが、他にも良いものはないだろうかと比較
したり、支払が可能かどうか、考え直す段階。ここで他
の商品に関心が向いたり、支払方法で躊躇したりする
と、②の段階に戻ってしまう。
魚:食べたいと思ったが、横の餌も良さそうだと比較した
り、考え直す段階。ここで隣の釣り人の餌が美味しそう
だったら、その人の獲物になってしまう。
⑥確信
人:比較したり、考え直したが、結局この商品がよいという
確信を持つ段階
魚:やっぱり最初の餌にしようと決めた段階
⑦決定
人:セールスマンの働きかけによって、購買を決心する段階
(クロージング)
魚:釣り人の餌の付け方(ルアーの大きさや色の選定)、
テクニック等により食い付いた段階(釣った)
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