労働生産性とは、どういう意味なのか。内部・外部問わず、誰かが医療・介護事業所の幹部及び従事者が理解できるレベルに咀嚼しなければ理解させることはできません。
また、理解できるよう育てていかなければ、医療保険・介護保険制度が厳しさを増す環境の中、真の病医院・介護事業所の発展・安定は望めないと現地現場で感じて来ました。
私が開催している医療・介護従事者対象の研修会で、『バランスが命』と題して、「生産性と賃金と労働時間(休日)」のバランスについて教育を行っています。
その一部を分割してご紹介してみます。
収入の原点 ⇒ あなたは誰から給料をもらっていますか?
1.賃金の原資を知る(理解する)
この質問に対し、「経営者(先生)から」という答えは返して欲しくありません。研修会で、看護師等の有資格者に必ず質問してみます。
残念ですが、「患者さん」「利用者さん」と答えてくれない職員が、私の研修会には、まだまだ存在します。
約28年、看護師や介護福祉士等の採用面接を体験してきましが、あからさまに、「仕事は暇で楽で、給料は高く休みが多い職場」を探している人もいました。物事の道理が分かっている人であれば、絶対持たない発想です。「あなたは、本気でそう思っているの?!」、と呆れてしまった人数は一桁ではありませんでした。
平成24年と30年4月には、「診療報酬・介護報酬同時改定」が実施されました。平成18年頃より、薬の長期投与、高齢者自己負担増等の影響で、月の来院回転数は減少するばかり。診療単価、薬価差益も介護報酬も下がる一方。
同じ事を毎年繰り返すだけでは、確実に収入は減少していきます。
お金を運んでくれる実患者・利用者数が増えない限り、増収はありえません。「仕事は暇で、給料は高い」職場を求めているレベルの職員には、無関心な領域ですが。
やり方もやる人も人数も、何も変わらなければ給料の原資は減り続け、結果、職員数を減らすのか、1人の取り分を減らすのか。
何も講じなければ、あなたの給料は確実に減少し、最悪の場合、事業所自体が倒産してしまいます。
ちょっと考えれば、理解できる事かと思いますが、理解できないと言うより、私の経験上、唖然とするくらい「収入の原資に無関心な職員が多い業界」だと感じています。
《収入がなければ賃金は払えない》
【収入の公式】
病 医 院 ⇒ 患者数×来院回数(下がる一方)×診療単価(下がる一方)
介護事業 ⇒ 利用者数×利用回数(定額性あり)×介護報酬(介護度で違う)
集患(客)力(増患・減患対策)⇒ あなたの集患力は何ですか?
意識した言動、能力向上への取り組み
幹部は職員に対し、「あなたの収入増を意識した言動、能力向上への取り組みがなければ、直接、あなたの給料に影響がある。」、ということを理解させなければならないのです。
2.経営の仕組みを知る(理解する)
収入のことだけを理解させると、勘違いも起きます。「適正利益がでなければ、賃金は支払えない」ことも教育する必要があります。
《収入があっても、適正利益がでなければ賃金は払えない》
利益には「5つの利益」がある
①売上総利益・②営業利益・③経常利益
④税引前利益(純利益)・⑤税引後利益
私が行う経営数字の研修会では、一つひとつの利益の意味を、実際の事業所の数字を使って説明しています。特に、利益が消えていく順番は必ず解説しています。
幹部の中には、利益が出た分は全額、単純に使えるお金と誤解している人が結構多いからです。
利益は、国が誰よりも先に税金として徴収し、次は借入先である銀行へ。職員は、単純に経営者の高級社用車代になっていると思っているかもしれません。